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指導員 大嶋利佳さんの黒帯レポート:第2回「空手が教えてくれるもの  ~緑帯から茶帯のころ~」

(前蹴上げ)「空手は精神的にも肉体的にも鍛えられる」とよく言われます。私はそのことを、普通の人ではついていけない厳しい練習をこなし、殴り合い、蹴り合いの痛みに耐えるから強くなるのだと思っていました。

でも稽古を続けていくうちに、そうではないことが分かりました。代官山カラテスクールでは誰でもムリなくこなせる程度の練習量で、突きや蹴りを身体に直接当てることもしません。それでもちゃんとやっていれば心身ともに強くなれる。それを実感した出来事がありました。

「前蹴上げ」という技があります。足を大きく、太腿が胸につくくらいの気持ちで振り上げるシンプルな技ですが、私はこれがなかなかうまくできませんでした。ある程度高くは上げられるのですが「スピードが遅い」と言われるのです。

稽古のたびに先生から「遅い!」と言われ、心の中で「これ以上ムリ。これが精一杯ですから」と正直不満に思っていました。ですが先生に口ごたえするわけにいきませんので、ご注意のたびに「押忍!」と答えて我慢していました。

ところがある日、その蹴りがなんだか速くできるのです。これまで「よいしょ」と持ち上げて戻していた蹴り足が、ひゅん!と上がって素早く戻ってくる感じがします。そう感じた瞬間、先生からも「速くなったなあ!!」という声がかかりました。

私はそのとき「上達するってこういうことなんだ!」とつくづく分かった気がしました。なんでも言われてすぐにできるわけではありません。でも、その「できない」に耐えていくと、いずれはできるようになるのです。

そしてもうひとつ思ったことがありました。もし私が先生のご注意に対して「これ以上はムリ」とか「私は精一杯やっています」と口ごたえしていたら、決してできるようにはならなかっただろう、ということです。

「やれ」と促してくれる人に対して「できない」と言い返すのは、自分自身に対しても「お前はできないし、できなくて
もいい」と言い聞かせているのと同じです。

IMG16366(明).jpgできないかもしれないと思っても口に出さず、そしてできるようになるまで耐える。これが社会人として身につけるべき「強さ」ではないでしょうか。

しかし考えてみれば、私は日常の生活や仕事の場では、周囲の人たちに対してなにかと口ごたえし、言い訳してアドバイスや指導を受け入れず、自分を正当化してしまうこともありました。

でも空手の場だけは「武道なのだから先生の指導には黙って従う」という気持ちになれたのです。だからこそ、このことに気づけたわけで、これは私にとって貴重な経験でした。

空手の試合で勝ちを目指すなら、激しい疲労や痛みに耐えられる精神と肉体の強さも必要でしょう。でも、そういう強さを目指すわけではない一般の社会人にとっても、空手は自分自身の向上に役立つ強さを与えてくれる。空手を習いながら、私はそういう思いも深めていきました。

(続く)

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