代官山空手スクール代表インタビュー
| ■ 代官山空手スクール代表斎藤英之です |
-- まずは、自己紹介からお願いします。
斎藤英之です、代官山空手スクールの代表です。2004年4月に代官山で社会人向けの空手スクールをはじめました。現在、表参道(月、水、土)月島(木、土)神楽坂(火)に道場があります。平日は19時すぎから土曜は13:00~開校しています。
私は10代の頃より二十年以上空手を続けています。
2003、2004年には極真会館主催全日本選手権(30代の部・重量級)で優勝することが出来ました。現在、日本の伝統武道である空手を性別、国籍に関係なく誰にでもわかりやすく楽しみながら学んで頂きたいと思い指導しています。
空手は、運動能力に関係なく正しく学べば必ず上達します。この機会に多くの方が興味を持たれ、空手を始められることを心待ちにしています。
| ■ 入門から黒帯までの道のり |
-- 斎藤さんがカラテをはじめた経緯をお教えください。
中学生の頃、空手の漫画を読みまだ純粋だった私は主人公の圧倒的な強さに完全にハマッてしまいました。すぐにでも空手を始めたかったのですが、当時私は北海道に住んでいて近くに道場がなかったので漫画のセリフを暗記するまで熟読し、空手の技術書なども読みまくっていました。
その後東京に家族と共に戻り高校入学後に入門しました、人とは違う事をやりたかったというのも入門動機のひとつです。
しかし、その当時25,6年前は今ほど空手は一般的には知られていなく、特に私の学んだ空手は「ケンカ空手」と呼ばれるくらい過激な稽古で有名で、当然周りの人は「ひ弱なおまえなんかに出来るわけないからやめとけ」などと言われてました。私の母でさえ「空手なんか野蛮なことをやる子に育てた覚えはない。」と言って泣いていました。
本当の話です。すごい過保護な親ですね(笑)。
そのくらい周囲からの空手のイメージは良くなかったですね。まぁ無事、高1の夏に入門出来たのですが、漫画で読むのと実際やるのとではあたりまえですが全然違います。
とにかく入門初日から叩かれて痛いわけです。黒帯の指導員から「相手を思いっきり叩いていいぞ」なんて言われても反対にやられるのが恐くて叩けるわけありません。
そして一方的に身体にパンチをもらい次の日はアザだらけです。
アザは少し日がたつと更に黒くなります。夏だったので半袖シャツで登校していたのですが、電車の中で腕のドス黒いアザを気持ち悪がられました。実は稽古初日で「もうやめよう」と思っていた、根性なしの私です。これは、忘れもしない昭和56年7月13日の初稽古の思い出です。
(現在当カラテスクールではこのような激しい稽古は一切行っておりませんのでご安心ください)
-- 最初の目標は黒帯でしょうか?
当時、空手を習う人はほとんどが「強くなりたい」と思って集まってきた男ばかりでした。現在のように子供のクラスもまだ盛んではなく、女性にいたってはほとんど道場にいませんでした。
まさに男、押忍の世界です。
今の様に趣味でやるという感覚は皆無でしたね、 みんな「俺は空手にかけているんだ」という雰囲気でした。
なんと言っても師範が道場に来られた時の緊張の糸が張り詰めるようなあの「気」は凄かったです。(師範はいつも中高生にはやさしかったです)
そんな中、私はと言えば漫画に憧れて始めただけで、実は「強くなりたい」とはさほど思っていませんでした。劇画と同じ空手衣が着れるのが嬉しく、早い時間に誰もいない道場で先輩の黒帯を勝手に締めて、鏡の前で構えのポーズをとっていました。
そんなわけで私の目標は「強くなりたい」とか「試合で勝ちたい」というものでなく「細く長く続けていつか黒帯を取りたいな」という軟弱なものでした。しかし、私のような気持ちでは激しい稽古についてゆけず3年ほどで挫折、その後数年間は空手から離れました。空手をしていなかった間ウェイトトレーニングをしていたのが後になり役には立ちましたけど・・
道場を離れて数年するとやっぱりまた空手がしたくなってきて、通っていたスポーツクラブにあったサンドバッグを一人黙々と叩いていました。そうこうしている内に「今、空手をして黒帯を取らないと将来きっと後悔するだろうな」という思いが日に日に強くなりついに再入門しました。
そして、3年で黒帯を取得したら辞めるつもりでした。25,6才の時です。
再入門した道場は大学のサークルのような感じで,上下関係もそれほど厳しくなく、先輩から後輩に気軽に話し掛けてくれたり雰囲気のよい道場でしたね。しかし、レベルは非常に高く日本チャンピオンが何人も出ていましたし、稽古内容も当時は試合で勝つためのテクニックや体力トレーニングが主でした。
そこの道場から試合に出場する人は、ほとんど入賞するような高いレベルだったので「ここで黒帯をとれればきっと自信になるだろうな」と思い稽古に励みました。なんとか当初の予定通り3年で黒帯を取得し、自分の目標はクリア出来ました、
その頃道場で共に稽古をした仲間や後輩達は、日本選手権や国際大会など大きな大会で上位に入賞したり優勝する者もいましたが、本来空手を稽古している目的が彼らと違う私は「優勝するなんてたいしたもんだ」と感心しましたが、そんな彼らと自分を比べることはありませんでした。
| ■ 2003年、2004年極真会館主催全日本選手権優勝までの道のり |
-- 斎藤さんの日本チャンピオンまでの道のりをお教え下さい。
その頃、道場で初心者クラスの指導の話をいただき仕事が休みである土曜日に教え始めました。
やり始めるととても面白くて、やりがいを感じるようになっていったんです。
いつしか「これを自分の仕事として出来ないかな」と考えるようになっていきました。 ちょうど「このまま会社生活を続けていても年功序列も終身雇用も崩壊した今、自分の能力ではこの先、サラリーマン人生のままだと明るくはないな」といった思いが強くなっていたんです。
また、一番最初に空手を始めるきっかけでもあった「人と何か違うことをしたい」という気持ちがまた心の中からふつふつと沸いてきたのを覚えています。
そこで、自分の道場運営には何が必要かといつも考えるようになりました。
独立して仕事をやっていくための本なども読みそれを空手道場の運営にあてはめて妄想?いや理想を思い描きました。
「やる気」や「情熱」は勿論「他道場との差別化」「ターゲットにする会員層」「立地」「資金」「卓越した技術」、そして何より「家族の理解」などが必要だと考えひとつひとつ出来ることから取り掛かりました。
と言っても会社勤めがありますから「3年位準備期間を充てよう、40才までには独立だ」と決めていました。
幸い家族には(当時妻一人)「自分の人生1回だから好きなことをやりなさい、応援する。」と力強い言葉をもらったのでもうやる気だけは十分!(内心、子供が生まれる前に話しておいて良かったとホッとしてました)
他の必要だと思われる事柄については毎日考えていたのでイメージはすぐに固まりました。手に職を持って仕事に就く際は「卓越した技術」(私の場合空手そのもの)が絶対必要だと感じていたので、これは出来るだけ大きな試合で優勝して実績をつくり自分に自信をつけることが一番だと考えました。
そこで、全日本大会の30才代のクラスに出場することにしました。初めて出場したときはあっさり負けてしまいましたが、すぐに、翌年の試合に向けて1年かけて準備にとりかかりました。
自分が試合に勝つイメージを1日に何十回も頭に描き、「絶対勝つ」とか「相手が強くても結局勝つのは自分だ」とか口に出していつも言っていましたね、当時、営業の仕事で車を運転する時間が多かったので、優勝する姿が心に焼きつくまで繰り返しイメージしてました。
稽古でも試合のルールや時間配分などをいつも考えて、試合に勝つためだけの稽古を行いました。ただ、いつも稽古を共にしていた仲間たちは、私より強い人ばかりだったので、実際の試合よりも稽古のほうがきつかったですね。
その結果、2年連続で優勝できました。結果を出せたのは高いモチベーションの持続と効率的な稽古が出来たからだと思います。特にイメージトレーニングは、少ない稽古時間しか取れなかった私にはとても有効でした。
また、出場した階級(重量級)では私がおそらく一番軽い体重だったことことも含めて勝てたことはその後の自分にとって大きな自信へとつながりました。
| ■ 空手の魅力 |
-- なぜ斎藤さんは20年以上も継続して空手が出来るのですか?
以前読んだ本で「人が何かを上手くなるには才能ではなく、それが好きかどうかで決まる、好きなら継続出来るしチャンスや良い環境もやってくる。」ということが書いてありました。 私が空手を始めた頃、覚えが相当悪かったと記憶してます。
それでもここまで続けて、そしてこれからも続けていこうと思うのは好きだからですね、それ以外ないです。
空手を教えることは天職だと思っています。
-- 空手を習ってどんないい事がありましたか?
本来、負けず嫌いでもなく人と競争することも得意でない自分が空手を通して学んだ3つの気持ち
- 自分自信に負けたくないという気持ち
- 自分で決めたことは必ず達成するという気持ち
- 自分に不利な状況でも出来る範囲で考え、行動し、 「 その時に出来る最高の結果を出すぞ」という気持ち
-- 空手のスポーツとしての魅力をお教え下さい。
叩く、蹴る(パンチとキック)を中心に体を動かすことにより酸素を全身に送り血流を促進させることにより、細胞を活性化し活力ある体をつくります。
そして、持久力と筋力を強化し日常生活でも疲れにくくしなやかで俊敏な身体へと変わります。
心を無心ににして、突きと蹴りを繰り出してストレスを発散させて下さい。 何より、稽古後の爽快感は格別です。
-- 空手の武道としての魅力をお教え下さい。
肉体的な面では普通の人でも稽古を継続することにより、道具などを一切使わず素手、素足だけで強くなれることですね、何年も空手を稽古すると自分の身体が「人間凶器」に(笑)なっていくのを感じることでしょう。
精神面では「自分に負けない心」や「折れない気持ち」「弱い者をいたわる気持ち」など稽古を続けて行く中で身につけます。
でも始めたばかりの方は「空手が楽しい」と思えればそれで十分です。
始めから気合十分だとすぐに疲れてしまいますからね(笑)
そして空手で養った「心」や「気持ち」が実社会で役に立つなら、肉体的な上達以上に指導者にとってはうれしい限りです。
そうなったらもう立派な黒帯ですね。
※ 取材日時 2008年2月
※ 撮影・インタビュー・制作 和田英克(ハイパーアイテイ)


